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インプラント周囲炎とは?原因と症状・予防方法をチェック
インプラント治療後のメンテナンスを怠った場合、インプラント周囲炎を発症する可能性があります。最悪の場合、インプラントが脱落したり、原因菌が全身に回ったりするため、注意しなければなりません。
今回はインプラント周囲炎の原因や、インプラント治療後の歯茎ケアの方法を紹介します。これからインプラント治療を行う方や、治療を終えた方は今後のメンテナンスにお役立てください。
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目次
そもそもインプラントとはどのような治療?
インプラントとは、体内に埋め込む人工物のことです。
歯科治療では顎の骨にネジを埋め込んで歯を立てる人工歯と、その治療方法がインプラントと呼ばれています。
差し歯治療と混同されることがありますが、差し歯は歯根が残っているところに土台を作って歯の被せものを取り付ける治療です。
インプラントのように歯根から人工物を建てることができないため、ものを噛んでいると歯がとれることがあります。
一方、インプラントは義歯を強く固定できるため、自分の歯のように使える点がメリットです。
インプラント治療の費用相場
自由診療であるインプラントは、検査費用・手術費用・材料費・アフターケア料金を含めて約300,000円〜500,000円が相場です。
歯科医院ごとに料金を設定できるため、費用の総額には幅があります。
クリニックの設備や使用するインプラントの材料によって費用が変動します。
奥歯にインプラントを1本埋め込むときの費用相場は次のとおりです。
【奥歯のインプラント治療の相場】
内訳 | 費用 |
検査/診察費用 | 15,000~50,000円 |
手術費用 | 150,000~350,000円 |
人工歯/被せもの費用 | 50,000~180,000円 |
仮歯費用 | 5,000~20,000円 |
抜歯費用 | 5,000~8,000円 |
手術後のアフターケア費用 | 1,500~10,000円 |
※上記は一例です。
手術自体にかかる費用は150,000〜350,000円程度です。
全体の費用の中では手術費がもっとも高額になりますが、術後のアフターケアの回数やトータルの通院回数などによっても費用が変わります。
関連記事:インプラント治療の費用相場について
インプラント周囲炎とは?
「インプラント周囲炎」は、インプラントを埋め込んだ歯の周囲にある組織に炎症が起きるトラブルです。
人工歯であるインプラント自体は生きた組織ではないため炎症の心配はありませんが、人工歯を取り巻く歯肉などの組織は歯周病菌によって炎症を起こすおそれがあります。
インプラント周囲炎が進行すると、炎症が歯槽骨と呼ばれる骨にまで及び、重症化するおそれがあります。
インプラント周囲炎とは別に粘膜のみに炎症が発生する「インプラント周囲粘膜炎」という症状にも注意が必要です。
関連記事:インプラントのトラブルの原因と対策方法
インプラント周囲炎と歯周病の違いについて
インプラント周囲炎と歯周病はどちらも歯周病菌によって引き起こされます。
2つの症状の違いは次のとおりです。
【インプラント周囲炎と歯周病の違い】
症状名 | インプラント周囲炎 | 歯周病 |
発生箇所 | インプラントの周りに発生する | 磨き残しや歯垢のある場所に発生する |
自覚症状 | 初期段階ではほとんど感じない 歯茎の腫れや赤みがみられる | 初期段階ではほとんど感じない 歯茎の腫れや赤みがみられる |
進行速度 | 歯周病よりも進行が早い | 段階的に進行する |
重度の症状 | 歯肉の腫れ・排膿 インプラントの動揺・脱落 歯槽骨の破壊 | 歯肉の腫れ・排膿 歯の動揺・脱落 歯槽骨の破壊 |
歯周病は、歯茎や歯と歯茎のすき間(歯周ポケット)に歯垢が付着し、歯石となって歯周病菌が増殖する症状です。
増殖した歯周病菌は歯肉炎や歯周炎を引き起こし、段階的に重度へと進行します。
インプラント周囲炎は、元の天然歯が存在しない人工歯の周囲に発生するため、症状に気づきにくい特徴があります。
初期の段階ではほとんど症状に気づかないため、重度に進行しやすいといわれています。
インプラント周囲炎の主な症状と進行状況
インプラント周囲炎も歯周病と同じように段階的に進行するため、注意が必要です。
段階ごとの症状は次のとおりです。
【インプラント周囲炎の症状】
状態 | 程度・症状 |
正常な状態 |
|
インプラント周囲粘膜炎 |
|
インプラント周囲炎 |
|
ここからは、それぞれの症状についてみていきましょう。
進行状況①正常な状態
インプラントとその周囲に問題がなく、インプラントの埋入直後の清潔さを維持している状態です。
顎の骨にインプラントが埋め込まれ、しっかりと固着した状態で歯肉がそれらを包んでおり、歯の動揺や歯茎のトラブルはみられません。
インプラント自身は人工歯のため、歯そのものに虫歯のようなトラブルが起きる心配はありませんが、飲食によって人工歯が汚れてくると、細菌が増殖し周囲の歯肉が炎症を起こします。
毎日の歯磨きと定期検診で、お口の中の健康を維持することが大切です。
進行状況②インプラント周囲粘膜炎
汚れた人工歯の放置や、お口の中を不衛生な状態にしていると、インプラントの周囲に歯周病菌が広がって炎症が起きやすくなります。
インプラント周囲粘膜炎は、インプラント周囲炎よりも前の段階であり、初期症状として知られるトラブルです。
歯肉炎と同じような症状が現れ、歯茎が赤く腫れてきて、歯を磨いたときに出血がみられます。
炎症の程度が軽度なため、この段階でトラブルを予防すれば周囲炎に進行することはありません。
進行状況③インプラント周囲炎
インプラント周囲炎は、インプラント周囲粘膜炎がさらに進行した状態です。
インプラントを埋め込んだ場所の周囲に歯周病と同じような症状が現れ、歯茎の激しい腫れや痛み、出血などがあります。
すでに歯周ポケットの奥までプラークが入り込んでいるため、膿が出てくる場合もあります。
人によっては歯周病と同じ症状として口臭や歯ブラシが当てられないほどの痛みが現れます。
中等度の状態で早めに対処することが大切です。
症状が進行すると、歯茎自身がインプラントを支えきれなくなりインプラントが動揺し、歯そのものが抜け落ちてしまったり、摘出が必要になったりと、歯として使用できなくなってしまいます。
インプラント周囲炎かどうかのチェック項目
インプラント周囲炎は、インプラント周囲粘膜炎が中等度以上に進行した状態です。
インプラントを埋入している方で周囲炎の疑いがある方は、以下の項目を確認してみてください。
【インプラント周囲炎のチェックポイント】
- インプラントの周囲が腫れている
- インプラントの周囲が赤くなっている
- インプラントの周囲に痛みがある
- インプラントの周囲から膿が出ている
- インプラントの歯がぐらぐらしている
- インプラントの歯が長くなってきた
- インプラントの歯に違和感がある
チェック項目のうち当てはまるものが多い方ほど、早期に歯科医院を受診するようにしてください。
インプラント周囲炎を放置するとどうなるのか?
インプラント周囲炎は、歯周病菌が原因で発生するトラブルです。
歯周病は特定の箇所にとどまらず、広範囲に炎症を発生させるおそれがあります。
インプラント周囲炎を放置していると、歯周病が悪化して歯茎が人工歯を支えきれなくなり、インプラントがぐらついて噛み合わせにも影響します。
他の歯への負担も大きくなるため、早期発見・早期治療が重要です。
インプラント周囲炎になりやすい原因
インプラント周囲炎になりやすい原因は次のとおりです。
【インプラント周囲炎になりやすい原因】
- インプラント後のメンテナンス不足
- 歯周病の治療不足
- 生活習慣・既往歴・癖などの影響
- 食いしばりや歯ぎしり
原因①インプラント後のメンテナンスが不足している
インプラントを埋め込んだ場所は人工歯に置き換わりますが、歯茎や歯周ポケットは歯垢が溜まりやすいため、口内ケアはインプラント治療の前よりも丁寧に行ってください。
歯垢が溜まると歯石へ変化し、自分の力では取れなくなってしまいます。
インプラント周囲炎を予防するためには普段から丁寧にメンテナンスを行い、こまめに定期検診に通って予防を心掛けましょう。
関連記事:インプラントのメンテナンスが必要な理由は?費用の目安や寿命を伸ばすために心がけたいこと
原因②歯周病の治療不足
お口の中が不衛生な状態になると、インプラントを埋め込んでいない箇所にも歯周病が発生しやすくなります。
歯周病にかかってしまったときは早期に治療を開始するべきですが、治療が十分に行われていないと、インプラント周囲炎の原因になるおそれがあります。
歯周病菌は口の中を移動し、住みやすい場所を見つけて増殖するため、インプラントの部位にかかわらず歯周病にならないよう予防しなければなりません。
原因③生活習慣・既往歴・癖などが影響している
炎症を悪化させる生活習慣としては、喫煙が挙げられます。
タバコに含まれるニコチンなどの有害物質は血液の循環を悪化させるため、インプラント周囲炎の発症・進行リスクを高めてしまうのです。
既往症としては糖尿病のような全身疾患に注意が必要です。
血糖コントロールを行わなければ傷口が塞がりにくくなり、免疫の低下による細菌感染のおそれがあります。
普段の癖としては、歯ぎしりや食いしばりによってインプラントに負荷がかかるケースに注意が必要です。
原因④食いしばりや歯ぎしりをする
食いしばり、歯ぎしりはインプラントに強い力をかけてしまい、埋入したインプラント体が支えきれずに破折するおそれがあります。
力がかかり続けると歯茎が下がっていき、深くなった歯周ポケットから細菌が侵入しやすくなるため、強く噛む癖がある方は対策が必要です。
インプラント周囲炎になってしまったら?
インプラント周囲炎にかかってしまったときは、2つの治療法を検討することになります。
非外科的治療と外科的治療についてみていきましょう。
治療法①非外科的治療
非外科的治療は、手術のような外科的方法を使わずに行う治療です。
歯周ポケットや歯のクリーニング、ブラッシングの指導や薬剤を使った消毒・洗浄のほか、機械を使って歯垢や歯石を除去します。
治療法②外科的治療
外科的治療は、表面的な消毒や清掃では行き届かない状態に対して行う治療です。
炎症組織の除去・インプラント体の抜去とクリーニング・血小板などを使った骨再生処置が該当しますが、治療方法は患者さんごとに異なります。
インプラント後の歯茎ケアのポイント
インプラント治療後の歯茎ケアとして、4つのポイントを押さえましょう。
ケアポイント①丁寧なセルフケアをする
歯磨き・マウスウォッシュを使った洗浄・デンタルフロスや歯間ブラシを使った歯垢除去は、炎症や歯周病の予防に効果的です。
ケアポイント②歯科医院で定期的なメンテナンスを受ける
歯石になってしまったものは定期的に除去し、歯の表面についた汚れとともにクリーニングを行いましょう。
定期的なメンテナンスとして、インプラントが正しく使用できているかもあわせてチェックしてください。
ケアポイント③禁煙する
歯肉退縮や歯肉への血液循環を阻害する喫煙習慣は、インプラント治療後からは控えることをおすすめします。
禁煙外来の受診や禁煙グッズの利用で、少しずつ喫煙習慣を減らしていきましょう。
ケアポイント④生活習慣を整える
糖尿病のような全身疾患がある方は、既往症の治療にも取り掛かりましょう。
栄養バランスのとれた食事を中心に、食後は時間をおきすぎず歯磨きを行ってください。
食べものをよく噛むと唾液が分泌されますので、しっかりとものを噛むことを心掛けましょう。
インプラント周囲炎とはインプラント周辺で起こる歯周病のような疾患のこと
今回は、インプラント治療とインプラント周囲炎について紹介しました。
インプラント周囲炎は歯周病の一種ですが、天然の歯ではなく人工歯に起きるトラブルのため、自覚症状に乏しい特徴があります。
毎日のケアと定期検診で、炎症を早期に発見し予防・ケアを続けることが大切です。
普段からお口の中の状態をよくチェックし、禁煙や既往症の改善を続けていくことも予防に効果があるため、口内ケアとセルフケアをどちらも意識していきましょう。
あきもと歯科は、患者様のニーズに寄り添い、個々の口腔状況に合わせた最適な治療法をご提案しております。
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