Column
虫歯で抜歯は最後の手段|抜歯の基準と歯を残す治療、抜歯後の選択肢を解説
「もしかして、この歯、もう抜かなきゃいけないのかな…」
鏡の前でため息をつきながら、そんな不安な気持ちになっていませんか? テレビドラマの影響もあってか、「ひどい虫歯=抜歯」というイメージが、どうしても頭をよぎってしまいますよね。
でも、どうか安心してください。現代の歯医者さんたちが、何よりも大切にしている想い。それは、「あなたの歯を、一本でも多く、一日でも長く守ること」なんです。だから、歯医者さんだって、あなたの歯を抜きたくて抜くわけじゃありません。抜歯は、本当に、本当に、最後の手段なのです。
この記事では、歯医者さんが「ごめんなさい、抜きましょう」と決断せざるを得ない、やむを得ないケースとはどんな時なのか。そして、その崖っぷちから歯を救い出すための治療法、さらには、もしも歯を失ってしまった場合にあなたの力になってくれる選択肢まで、一つひとつ丁寧にお話ししていきます。
この記事を読み終えるころには、きっとあなたの不安は軽くなり、ご自身の歯と前向きに向き合うための「知恵」という武器が手に入っているはずです。
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目次
歯科医師が「抜歯」を判断する、やむを得ない医学的基準
歯科医師は、いつだってあなたの歯を残す方法を探しています。でも、どうしても「ごめんなさい」と言わなければならない時があるんです。それは、歯を残すことが、かえってあなたのお口全体に悪い影響を与えてしまうと判断したとき。具体的には、こんなケースです。
- 虫歯菌が、歯の根っこの先で暴れている
虫歯菌が歯の神経を突き破り、さらにその奥深く、歯の根っこの先端で大暴れして、あごの骨を溶かすほどの炎症(根尖病巣)を起こしてしまっている状態です。通常の神経の治療を頑張っても、膿が止まらない…。そんな深刻なケースが当てはまります。 - 歯がボロボロで、もう土台の役目を果たせない
虫歯で歯のほとんどが溶けてしまい、新しい被せ物を支えるだけの壁が残っていない状態です。ここに無理やり家(被せ物)を建てても、すぐに倒れたり、土台ごと崩れたりする危険がとても高いのです。 - 歯の根っこに、ヒビが入っている、または割れている(歯根破折)
転んでぶつけたり、無意識の歯ぎしりだったり、昔の治療の影響だったり…。歯の大黒柱である「根っこ」に、修復不可能なヒビが入ってしまった状態です。その割れ目からバイ菌が入り込んでしまうため、残念ながら、歯を残すことは原則として非常に難しくなります。 - 歯を支える骨が、ほとんどなくなってしまった
虫歯だけでなく、重い歯周病も同時に抱えているケースです。歯を支えるべきあごの骨が溶けてなくなり、歯がグラグラと大きく揺れている状態では、噛むという大切な役目を果たせません。周りの歯を守るためにも、抜歯という決断が必要になることがあります。
【重要】抜歯を回避するために行われる「歯の保存治療」
「もうダメかも…」そんな崖っぷちの状態でも、歯医者さんは簡単には諦めません。あなたの歯を救い出すための、いわば「最後の切り札」とも言えるスペシャルな治療法があるんです。
- 精密根管治療
これは、神の手のような精密さで行う、歯の神経の管の大掃除です。マイクロスコープという歯科用の顕微鏡で、肉眼では見えない迷路のような管の奥の奥まで覗き込み、悪さをする細菌を徹底的に洗い流します。この治療によって、今までなら抜くしかなかった歯を救える可能性が、ぐんと高まりました。 - 歯周組織再生療法
歯周病で溶けてしまった歯の土台(骨)を、魔法のようなお薬や特殊な膜を使って「呼び戻す」治療です。失われた骨が再生すれば、グラグラしていた歯もしっかりと安定し、もう一度自分の歯として活躍してくれる可能性があります。 - エクストリュージョン法(歯根廷出術)
歯ぐきよりも深い場所で虫歯が進行してしまった歯を、矯正治療のように、ゆっくりと「よいしょ、よいしょ」と歯ぐきの上まで引っ張り出すテクニックです。これによって、被せ物のための新しい土台を確保し、抜かずに済むケースがあるのです。
もちろん、これらの治療が誰にでも使えるわけではありません。でも、「もう抜くしかない」と諦める前に、こんな切り札があることを、ぜひ知っておいてくださいね。
抜歯後の機能回復を担う3つの治療法【特徴・費用・期間の客観比較】
もし、本当に残念ながら歯を抜くことになったとしても、落ち込まないでください。失った歯の役割をしっかり補ってくれる、頼もしい仲間たちが待っています。ここでは代表的な3つの選択肢を、それぞれの個性と合わせてご紹介しますね。
治療法 | 特徴 | 一般的な費用感 | 一般的な治療期間 |
---|---|---|---|
インプラント | あごの骨に新しい「根っこ」を立てる、頼れる本格派。周りの歯に迷惑をかけず、自分の歯のようにしっかり噛めます。 | 高価ですが、それだけの価値があります(保険適用外)。 | じっくり時間をかけて、体の一部になります(数ヶ月〜1年ほど)。 |
ブリッジ | 両隣の歯に助けてもらい、橋を架けるチームプレイ型。取り外しの必要がなく、見た目も自然です。 | 保険も使え、比較的手頃。こだわりの素材も選べます。 | 短期間で、あっという間に完成します(数週間〜1ヶ月ほど)。 |
入れ歯 | 取り外しができる、お手軽で柔軟なタイプ。多くの歯を失った時にも頼りになり、お掃除も簡単です。 | 保険ならとても安価。ぴったりのオーダーメイドも可能です。 | ブリッジと同じく、スピーディーに作れます(数週間〜1ヶ月ほど)。 |
どの治療法があなたにとって最高のパートナーになるかは、人それぞれです。失った場所、残っている歯の状態、そしてあなたのこれからの生活スタイル。それらを全部考え合わせて、先生とじっくり相談しながら決めていきましょう。
抜歯後の注意点:安全な回復のために知っておくべきこと
手術が終わったら、あとは体が頑張って治してくれる時間。その治癒力を最大限にサポートするために、ほんの少しだけ気をつけてほしいことがあるんです。
- かさぶたの役割をする、大切な「血餅(けっぺい)」を守ってあげてください。
歯を抜いた穴にできる血の塊は、傷口を守る天然の絆創膏。これが剥がれると、激しい痛みの原因になってしまいます。強くうがいをしたり、ストローで飲み物を吸ったりするのは、しばらくお休みしましょう。 - 血の巡りが良くなることは、今日だけお休み。
お酒を飲んだり、熱いお風呂に長く浸かったり、激しい運動をしたり…。これらは血行を良くして、再び出血させたり痛みを強くしたりすることがあります。今日一日は、ゆったりと過ごしてくださいね。 - タバコは、傷の治りの大敵です。
タバコは血管を縮ませて、傷口に必要な栄養や酸素が届くのを邪魔してしまいます。バイ菌と戦う力も弱まってしまうので、回復するまでは、少しだけ禁煙を頑張ってみませんか。
納得できる治療を選ぶために、まずは正確な診断を
虫歯の治療で、歯を抜くのは、本当に最後の最後の手段です。ここまで見てきたように、あなたの歯を守るための治療法は、たくさんあります。そして万が一の時も、失った機能を取り戻すための頼もしい選択肢が、ちゃんと用意されています。
一番大切なのは、一人で悩んで「もうダメだ」と決めつけてしまわないこと。まずは、あなたの歯のことを一番よく分かってくれる、信頼できる歯医者さんに相談して、今の状態を正確に知ることから始めましょう。
その上で、どんな選択肢があるのか、それぞれの良いところ、ちょっぴり大変なところについて、あなたが心から納得できるまで説明を受けてください。そうして選んだ道なら、きっと後悔することはないはずです。
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