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サイナスリフトとは？ ソケットリフトとの違いや治療を受けるメリット・デメリットを解説
インプラントのサイナスリフトとは、上顎の骨が不足しているときに行う骨造成手術の術式です。上顎の骨造成手術は他にソケットリフトという方法があるものの、両者は適用できる顎の骨の状態や手術の仕方に違いがあります。
本記事では、サイナスリフトとはどのような手術かや、ソケットリフトとの違い、費用や治療期間、治療を受けるメリット・デメリットを解説します。
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目次
サイナスリフトとは上顎の骨造成手術のこと
サイナスリフト（上顎洞底挙上術）とは、インプラント治療をする際、上顎の骨の高さや厚みが十分ではないときに行う骨造成手術の一つです。具体的には、歯肉を切開して、上顎の奥歯の上にある「上顎洞」と呼ばれる空洞部分に骨補填材を注入し厚みを持たせます。
インプラント治療では、歯を支える土台となる歯槽骨への人工歯根（インプラント体）の埋め込みが必要です。しかし、歯槽骨は病気などが原因で減ることがあり、骨が足りない状態で治療をすればインプラント体がずれたり、脱落したりする恐れがあります。このため、インプラント治療の前に、必要に応じ骨造成手術を行います。
サイナスリフトは、骨造成手術の中でも上顎の骨が不足しているときに行う手術です。具体的には、顎骨の高さが5mm以下、厚みが8mm未満のときや、多くの歯を失っているときに適用されます。幅広い症例に適用できるものの、手術時の体の負担は大きくなりやすいです。
ソケットリフトとの違い
上顎の骨を増やす手術方法の中にはソケットリフトもあります。ソケットリフトは上顎の骨の高さが上顎洞を覆うシュナイダー膜まで5mm以上あるときや、骨の厚みが8mm以上あるとき、歯を失っている範囲が狭いときに適応されます。
手術時は、インプラント体を埋入するための穴から骨補填材を注入するため、負担が少ない点がメリットです。
それぞれの治療方法の違いをまとめると以下となります。
| サイナスリフト | ソケットリフト | |
|---|---|---|
| 必要な骨の厚み・高さ | 高さ5mm以下、厚みが8mm未満 | 高さ5mm以上、厚み8mm以上 |
| 失っている歯の程度 | 広範囲 | 局所的 |
| 治療時の体の負担 | 比較的大きい | 比較的小さい |
| 治療費用 | 15万～30万円程度 | 3万～10万円程度 |
| 治療期間 | 6～9カ月 | 3～5カ月 |
サイナスリフトよりもソケットリフトの方が手術はシンプルなため、治療期間も費用も抑えやすい傾向です。ただし、適用できる症例はサイナスリフトよりも限られています。
サイナスリフトの治療費用
サイナスリフトの治療費用は15万～30万円程度です。インプラント治療は事故や病気などの特別な理由がない限り、自由診療が基本のため一般的な歯科治療と比べ高額になりやすいです。
骨造成手術の中でも高度な技術が必要であり、対応できる医師も限られています。また骨補填材も安全性などの品質が求められるため高価です。
以上の点から、治療費用は骨造成手術の中でも高額になりやすいです。
サイナスリフトのメリット
サイナスリフトには以下のメリットがあります。
- 上顎の骨が足りなくてもインプラントを検討できる
- 広範囲の骨造成が一度にできる
- インプラント治療後の順調な経過が期待できる
- シュナイダー膜を確認しながら治療できる
それぞれ、詳しく解説します。
上顎の骨が足りなくてもインプラントを検討できる
病気や体質など、何らかの理由で現状ではインプラント体の挿入が難しいと診断されても、サイナスリフトを併用すれば治療ができる可能性があります。
骨の量や厚みが原因でインプラント治療ができないと診断されたときは、サイナスリフトに対応している歯科医院でセカンドオピニオンを受けると良いでしょう。
広範囲の骨造成が一度にできる
サイナスリフトでは上顎の骨に少し広めの穴（窓）を開け、必要な分だけ骨補填材を注入します。
広範囲にわたる骨造成が一度にできるため、複数本のインプラント体や、長さのあるインプラント体の挿入時に適しています。
インプラント治療後の順調な経過が期待できる
上顎の骨が少ない状態で無理にインプラント治療をすると、インプラント体が曲がったり抜け落ちたりするだけではなく、上顎洞の中に入り込む恐れもあります。脱落すると埋入手術を再び行うことになるため、体の負担も大きいです。
事前に顎の骨を造成しておけば、これらのリスクを軽減できるため、治療後の順調な経過が期待できます。
シュナイダー膜を確認しながら治療できる
サイナスリフトはソケットリフトと比べ上顎の骨を大きく切開するため、上顎洞を覆う粘膜の「シュナイダー膜」を見ながら治療を進められます。
シュナイダー膜が傷つき感染症や炎症が起こると、蓄膿症などに発展する恐れがあるため、治療時には細心の注意が必要です。なお、万が一破れてしまったときは、縫合したり、コラーゲンを張り付けたりして補修します。
サイナスリフトのデメリットや注意点
サイナスリフトは他の骨造成手術と比べ負担が大きく、治療期間も長くなります。また、治療後は痛みや腫れなどが生じることがある点にも注意が必要です。
デメリット
サイナスリフトのデメリットは以下の通りです。
- 身体的負担が大きい
- インプラント治療の期間が長期化する
歯茎や骨の切開が必要となり、術後は痛みや腫れも伴うことが多いため、身体的負担が大きい手術です。インプラント治療と合わせると計2回以上の手術が必要になることもあります。
また骨補填剤の定着を待ってからインプラント体を埋入する場合、治療が終わるまで1年程度かかることもあります。治療が長期化しやすく、通院回数が多い点もデメリットの一つです。
注意点
サイナスリフトの注意点は以下の通りです。
- 腫れや痛みを伴いやすい
- 治療後にトラブルが生じる恐れがある
サイナスリフトでは術後10日程度、炎症や痛み、腫れが生じることがあります。痛みのピークは術後3日とされるものの、個人差があるため一概に言い切ることはできません。なお、痛み止めが効かないほど強く痛むときは感染症など別の病気を発症している恐れがあるため、治療を受けた医院に相談しましょう。
サイナスリフト後のインプラント治療では、まれではあるものの副鼻腔炎の発症や、上顎洞へのインプラント体の貫通などの失敗が起きることがあります。これらのリスクを防ぐためにも、サイナスリフトを受けるときは、インプラント治療に精通した歯科医院を選ぶことが大切です。
サイナスリフトの手順
一般的なサイナスリフトの手術手順は以下の通りです。入院の必要はなく日帰り手術が基本で、手術は45分～1時間程度で済みます。
- 事前診断を実施する
- 麻酔をする
- 歯肉を切開する
- 骨に窓を開ける
- シュナイダー膜を剥離する
- 骨補填材を入れる
- 窓をふさぎ歯肉の縫合をする
- 骨の形成を待ちインプラント治療をする
それぞれ、概要を解説します。
1. 事前診断を実施する
サイナスリフトの事前診断では、上顎の骨がどの程度不足しているのか、口腔写真やCT画像、かみ合わせの検査などを行い総合的に判断します。
2. 麻酔をする
サイナスリフトは局所麻酔で手術できます。恐怖心が強いときは、静脈内鎮静で意識を落とすことも可能です。
3. 歯肉を切開する
麻酔が効いたら、インプラント治療を行う上顎の頬側から歯肉を切開します。
4. 骨に窓を開ける
上顎の骨が露出したら、内部のシュナイダー膜を傷つけないように慎重に窓を作ります。骨の厚みは1～3mm程度のため、少しずつ骨を円形に切っていきます。
5. シュナイダー膜を剥離する
窓が開いたら、シュナイダー膜を傷つけないように剥がし、上顎洞の空洞部分に押し上げ空洞を作ります。膜が破れれば修復処置をします。
6. 骨補填材を入れる
空洞部分に奥から骨補填材を入れます。
7. 窓をふさぎ歯肉の縫合をする
骨補填材を入れ終わったら窓を代用骨などで塞ぎ、歯肉を縫い合わせます。インプラント治療を同時にする方法では、このときインプラント体の埋入まで行います。
8. 骨の形成を待ちインプラント治療をする
手術が終わったら所定の期間安静を保ち、骨が形成されるのを待ちます。CT画像などで骨の形成が確認できたら、通常のインプラント治療を進めていきます。
サイナスリフト治療後の注意点
手術をした後は患部を刺激しないようにして、できるだけ安静に過ごしましょう。以下の注意点を紹介します。
- 患部の刺激になることをしない
- 処方された薬は指示通りに飲む
- 副鼻腔に負担のかかる行為をしない
- うつ伏せにならない
患部の刺激になることをしない
患部の刺激になる以下の行為は避けるようにしましょう。
- 頻繁なうがい
- 患部付近の歯磨き
- 指や舌で患部を触る
- 硬い物や刺激物を食べる
- アルコールの摂取
特に手術から2～3日は痛みや腫れが出やすいため注意が必要です。
処方された薬は指示通りに飲む
痛み止めや抗生物質などの薬が処方されているときは、指示通り飲みましょう。血が止まったり、痛みが引いたりしたからといって、独断で中断してはなりません。
副鼻腔に負担のかかる行為をしない
副鼻腔に負担がかかるとシュナイダー膜が破れる恐れがあります。運動やカラオケなど呼吸が激しくなる行為の他、鼻を強くかむなどの行為も控えるようにしましょう。
うつ伏せにならない
うつ伏になると骨を増やした部分の血行が悪化するため、傷の治りが遅くなる恐れがあります。寝るときは仰向けの姿勢を取りましょう。
骨不足でインプラントが難しいときは骨造成手術を検討しよう
サイナスリフトは上顎の骨が少なく、インプラント体の埋入が困難なときに行う骨造成手術の一つです。事前に骨造成を行うことでインプラント治療後に順調な経過を得られる可能性が高まります。手術には高度な技術が必要なため、検討する際は信頼できる歯科医院で相談しましょう。
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